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ボラティリティとは

ボラティリティとは

投資の損失とリスクとボラティリティ

投資の原則は、損をしないことです。必ずしも、儲けることではない。資産は、それ自身として、本源的収益性を有します。

つまり、資産の保有に収益は内包しているのです(この点については、1月14日のコラム「価値と価格とインカムとバリュー」を、ご参照ください)。ですから投資とは、その収益を帳消しにするような損失をださないように、資産を管理することなのです。
では、投資の損失とは何か。自明のようなことで、しかも基本的すぎるくらい基本的なことなのですが、なかなか難しい問題です。
原点に返って、考え直しましょう。2月 4日のコラム「クレジット投資の魅力」に書きましたように、「お金を貸したら、一定期間後に利息をつけて戻ってくること、これが投資の、というよりも金融そのもの、原点です。お金が戻ってくる、つまり、リターンreturnしてくるから、リターン(投資収益)というのです。」
原点においては、問題は全く自明で、要は、損失とは、リターンしてきた金額が、最初に出した金額よりも、少ないことを意味するのです。これは、始点の現金と終点の現金を比較(キャッシュ・オン・キャッシュcash on cash)する、原始的ですが、しかし、基本的な考え方です。現金の増えた分が利益で、減った分が損失です。
この考え方、全く正しいのですが、実務的には、少し問題があります。「始点の現金と終点の現金」の比較という点です。つまり、始点と終点が明確である場合は、簡単なのですが、世の中、そういう単純な場合は、必ずしも多くないのです。

話は、例によって飛びますが、金銭信託というものがあります。年金資産をはじめ、ほとんど全ての資産運用において、資金の受け皿には、この金銭信託が使われています。

実は、金銭信託は、基本要件として、有期であることと、金銭(まさに現金)による出し入れを前提にしています。ですから、本来は、信託した金銭の額と、信託終了後に戻ってくる金銭の額とを比較して、増減を測定すればよいのです。減っていれば、減った額が損失となる、そういう単純な仕組みを原型としています。信託期間を一会計期間とした単純な現金経理、これが金銭信託の基本です。
脱線ついでに大航海時代に飛べば、当時は、航海は一つの投資です。まずは、初期投資金額で船を仕立て、商品を仕入れて出航する。途中、様々な港で、商品を売り、換わり金で別の商品を仕入れ、そうして出航地へ戻り、商品を全て売却して、投資金額を回収する。その一航海を一会計期間として、初期投資額と回収額とを比較して、損益をはじく。信託と同様な現金経理です。
信託や航海のように、始めと終わりの明確なものについては、損失の何たるかは自明です。ところが、多くの場合、投資もまた、企業(ゴーイング・コンサーン、going concern継続企業)と同じで、半永久的な継続事業として行うのです。ですから、始めと終わりは、明確ではない。故に、人工的に期間を切って(最長一年ですね)、当該期間の損益を計測することになります。
こうなると、とたんに、損失とは何かが、わかりにくくなります。損失は、あくまでも、計測期間中の損失であって、必ずしも、現金で確定した損失ではないのです。この問題をめぐる議論は、ご承知のように、全くきりがなく長く続けられているのですが、いまだに、よくわからないのです。困ったものです。

また、話は飛びますが、sleep well at night(夜よく眠る)という表現があります。

これは、朝、現金から投資を開始し、夕刻に帰宅するときは、全て売却して現金に戻すことをいうのです。夜間は、現金になっているので、海外の市場で何が起きようが全く心配することなく、よく眠れる、という意味です。銀行や証券会社などの自己勘定取引部門や、商品の運用会社などでは、現実に行われていることです。
このsleep well at night、投資の本質または投資の損失とは何かを、考える際に有益です。このやり方だと、確かに、投資という行為は継続的に行われていても、それは、一日で清算される投資の連続として行われるので、どの期間で切ろうが、その期間の損失は、明らかに現金としての明確で疑義のない損失であるわけです。
同じ流儀で、一年の始め、日本年度でいえば、4月1日に、現金から運用を開始し、翌年初くらいから現金化を始めて、3月31には完全に現金に戻す、そのような投資を想像してください。一年というのは短すぎるかもしれません。いま、現金で始めて現金で終わるまでの期間を、ホライズン(horizon)とよびましょう。ホライズンは、計画のない投資はない、としたときの、その計画の想定する期間です。これは、一年ではないかもしれませんが、一方で、漠然として「長期」でもあり得ないわけです。おそらく、3年くらいでしょうか。
ところで、現金化することは、損益の明確な確定という意味で、筋が通るような気もしますが、問題もあります。現金化して、もう一度、買い戻すのは、無駄であろう(いわゆる「タイミングのリスク」も含めた取引コスト)ということと、全ての資産について同じホライズンを適用するのはおかしいであろう、ということです。
そこで、常識的には、投資対象ごとに、ホライズンを定めて投資したならば、それぞれ、ホライズンの終期に売却することを前提にするのだが、改めて、その売却価格においても充分に投資価値があるならば、どうせ買い戻すことになるので、保有を継続する、そのような管理になるのだと思います。
ここでのポイントは、「売却価格においても充分に投資価値があるならば、保有を継続する」ということです。逆にいえば、価値がないならば、売却する。もっと常識的には、保有価値がなくなった時点で、ホライズンの途中と雖も、売却すべきだ、ということでしょう。そこで、損失がでるならば、それは、明確な現金の損失として、確定すべきだということです。価値の下落は、間違いなく、損失なのです。
このとき、価値と価格の峻別は、決定的に重要です。このことについては、私は、繰り返し、繰り返し論じています。2009年12月17日のコラム「価値の変動と価格の変動」や、前掲の「価値と価格とインカムとバリュー」をご参照いただけると、助かります。

さて、いよいよ、今回のタイトル「投資の損失とリスクとボラティリティ」との関係で、いきなり結論的定義へ進みましょう。

即ち、リスク(risk)とは、価値の変動であり、ボラティリティ(volatility)とは、価格の変動であると。更には、狭義のリスクとして、価値の下落(変動は上昇も含むので)を定義しましょう。狭義のリスクが、より常識的なリスクであるのは、もちろんです。
こういうと、リスクは損失ではなくて、損失の可能性だろう、といわれるかもしれません。その通りでしょう。しかし、そもそもが、損失の可能性のあるものに、投資する人はいない。損失は、結果的にのみ、認識されます。リスクは、結果として生じた投資価値の毀損を、事実として、つまり、売却して確定した現金の損失として、受け入れることでしょう。
実は、現金化の最大の難点は、ボラティリティです。これは、価値変動と関係なく、勝手に変動している全くランダムな要素です。期間損益を測定すれば、ボラティリティによって、表面的に損失のでることは、かなり大きな可能性としてあります。しかし、この損失は、価値が変動していない限り、複数の計測期間を跨げば損益相殺して消える性格の、見かけ上の損失です。故に、ボラティリティによって、常時、価格変動している中で、定期的に現金化することは、タイミングのリスクも含めた総取引コストの観点から、好ましくないわけです。
一方で、価値の毀損は、必ず現金の損失として、確定することが重要だろうと思います。これは、とりわけ、投資の規律(ディシプリンdiscipline)、あるいは統制(ガバナンスgovernance)の視点から、重要なのです。価値の下落に起因する価格の下落と、ボラティリティによる価格の下落とを、明確に区別すること、いいかえれば、本当の損失を認識することこそが、投資の本質だからです。その本質を際立たせるには、損失を現金の損失として、明示するのが一番いいのです。
私は、「長期投資」という言葉が、好きではありません。このような「漠然とした大きな言葉」は、ディシプリンやガバナンスの不在と、実質的に同義になる場合があるからです。短期的なボラティリティに惑わされてはならないことは、当然です。しかし、いかに短期でも、リスクには、即時に対応すべきです。
ボラティリティは、長期に付き合う以外に、対処の仕様がない。その意味で長期投資なのですが、あくまでも、その意味でのみ、長期なのです。
以上

ポストコロナ時代の企業経営 第2回:高ボラティリティ環境における経営戦略

コロナ問題の経済へのインパクトは、過去の不況と比べても、影響の速さや規模の大きさ、産業・国への波及度合いなどが桁違いに大きい。いくらVUCA(Volatility, Uncertainly, Complexity, Ambiguity)時代とはいえ、多くの企業にとっては準備も十分でない時に、不意打ちを食らったようなものである。
平成バブルの崩壊、アジア通貨危機、ITバルブの崩壊、リーマンショックと、日本はほぼ10年単位で大きな不況を経験してきた。これらのショックは、需要の落ち込みとともに市場ニーズの変化ももたらしてきた。今回の「コロナショック」で市場の不確実性に直面している現在、企業経営として改めて何を考えるべきであろうか。
従来、好不況の波があったが、産業毎に市場変動(以下、ボラティリティ)は異なる。消費財ビジネスのボラティリティは比較的低い(小さい)が、設備投資に関わるような産業財のボラティリティは高い(大きい)といえる。
本稿では、ボラティリティが高い産業として電子部品業界と工作機械業界を取り上げ、不確実性下の経営についての考察をしたい。両産業とも、景気の大きな波が来るたびに、成長性や競争力が二極化してきたように見える。ここには、シンプルであるが重要な学習テーマがあり、ポストコロナをにらんで経営戦略に活かすべきと考える。

電子部品メーカーの長期業績推移の特徴

1980年代に世界のトップに立った日本の半導体産業は、90年代以降競争力を低下させた。他方、半導体以外の電子部品産業においては、パソコン、携帯電話、スマートフォンなどアプリケーションの変化を超えて、日本企業は発展をしてきた。
日本の電子部品ビジネスには、①ビジネスサイクルが短い(アプリケーションの変化のサイクル、技術の世代交代サイクル、勝ち組ユーザーの入れ替わり等の影響を受けやすい)、②技術変化に対する先行的投資が不可欠、という特徴がある。このような特徴は、電子部品ビジネスにおいてボラティリティを高めている。
通常、市場が安定的でボラティリティが小さい場合には、企業の競争力の変化を起こすことは容易ではなく、成長力や収益力も格差が出にくいことが考えられる。しかし、上場している電子部品メーカーの中で、部品専業に近い企業の業績を分析すると、長期の成長性や収益力に差が生じていることがわかる。

電子部品業界は、市場の回復期は二桁成長をするが、後退期には売上が2割減、3割減となるのが通例である。このようなボラティリティの高い市場環境で、各社は競争していることになる。
このようなボラティリティの高いビジネスでは、次の2つのことが肝要となる。まず、市場の回復期にしっかりと成長して利益を出して体力を蓄え、次の後退期を乗り切れるように備えることである。
後退期には損失やリソースの消耗を抑えながら、次の回復期の準備をしておくことである。体力を温存できると戦略の自由度も高くなり、次の市場獲得に向けた準備がしやすくなる。そうすることで、次の回復期に供給力を確保することで、一気に市場を獲得することが可能となる。逆に市場の回復期に利益を蓄えきれず後退期で消耗が激しいと、次に向けての準備が進まず市場の回復期に出遅れることになる。
電子部品メーカーの村田製作所は、このような市場変化にうまく対応し、戦略的優位を確立してきた。ROIC(投下資本営業利益率)を見ると、リーマンショック以降、同業他社と比べて業績が際立って良くなってきていることが分かる。

工作機械メーカーの長期業績推移の特徴

ポストコロナをにらんだ経営戦略

市場のボラティリティの高い2つの業界を分析すると、好況期に次の不況期の準備をし、不況期に次の好況期の準備をするという好循環ができる企業が成長できることが分かる。
日本の大企業は、リーマンショック以降、固定費比率を下げ内部留保を積み上げてきた。財務戦略的には、高いボラティリティを前提とした準備をしてきたことになる。しかしコロナ問題に直面し、いくつかの課題が浮き彫りになってきた。
第一に、事業ポートフォリオの面である。突然とはいえ、急速な市場の落ち込みに直面したが、インパクトに耐え得る事業ポートフォリオの最適化をしてきたとは言い切れない。弱い事業ほど市場の後退期には収益が低下し、赤字になる可能性もあるが、このような弱い事業に対して手を打ち切れていたとはいえない。コロナの第2波、第3波が来れば、このような事業は益々苦しくなる。苦しい事業を温存すると財務面の制約が高まり、次の成長に向けた投資をすることが難しくなり、格好の投資のチャンスがあっても、みすみす機会を見逃すことにもなる。ポストコロナの成長をにらんで、事業ポートフォリオの在り方を検討し、実行に移すべきと考える。
第二に、ポストコロナをにらんで次の成長の準備をしておくことである。ポストコロナにおいて市場のニーズが変化する中で、デジタル化のように不変のトレンドもあるが、新しい成長の萌芽を見いだすことが重要である。不確実な環境であるため、このような萌芽を見いだすことは容易でない。萌芽を見いだすことに長けた人材を集めた、リカバリー体制を作ることも有効であろう。例えば、リーマンショックの時に某企業が取り組んだ事例はユニークである。大きな環境変化がある時に、多くの社員は茫然自失としているが、将来を見通すことを得意としている人材は泰然としている。その会社は、普段からこのような人材をマークしており、リーマンショック時にトップはこのような人材だけを集めて、プロジェクトの優先順位を決めた。
第三に、当然ながら消耗を抑えて体力の温存を図ることである。市場の回復期は需給がタイトになり、価格交渉も有利に進めやすい中で供給力があれば市場獲得もしやすくなる。このためには、供給力の垂直立ち上げが重要となり、体力の温存が重要となる。例えば、生産技術が属人的な要素があればあるほど、次の市場の回復期に人材を保てるかどうかが回復期の業績を握ることになる。

ボラティリティとは?株の投資判断に活かすために知っておくべき5つのこと

1、ボラティリティとは?

ボラティリティ(volatility)とは 「価格の変動率」 のことです。

投資判断において一般的に用いられるボラティリティには、 「ヒストリカル・ボラティリティ(HV)」と「インプライド・ボラティリティ(IV)」 があります。

(1)ヒストリカル・ボラティリティ(HV)

ヒストリカル・ボラティリティ(HV)は、 過去の価格の変動率をもとにして計算される指標 のことです。

60日ヒストリカル・ボラティリティ(年率換算)】

(2)インプライド・ボラティリティ(IV)

  • 株価(原資産価格)
  • 権利行使価格
  • 満期までの残存期間
  • 金利
  • ボラティリティ
  • ボラティリティを除く要素については、実際の市場で確認できます。
  • 現在の市場におけるオプション価格が、このモデルにおける理論上のオプション価格と等しいと仮定すれば、ボラティリティ以外の値はすべて明らかです。

2、ボラティリティ指標の見方・ポイント

(1)低ボラティリティ状態が続くと相場が大きく動く可能性が高まる

そのため レンジをブレイクしたときには、相場が大きく動く 可能性が高くなります。

そのためエントリーのタイミングは、 株価の動きや指標などから総合的に判断することが大切 です。

(2)デイトレードにはボラティリティの高い銘柄を選ぶ

短期間で値幅をとりにいく デイトレードには、取引が活発に行われており、値動きが大きいことが重要なポイント となります。

3、ボラティリティの高い銘柄を検索する方法

(1)SBI証券 スクリーニング

(2)楽天証券 スーパースクリーナー

(3)株マップ.COM 過去60日ボラティリティランキング

(4)TradingView 株式銘柄スクリーナー

4、日経平均ボラティリティインデックスとは?

日経ボラティリティインデックス(日経平均VI)とは、 投資家が予想する1ヶ月先の日経平均株価の変動率を算出し、指数化したインプライド・ボラティリティ(IV) です。

ボラティリティとは

日経平均オプションの価格から分かること

一方で、ボラティリティの将来の見通しを把握したい場合もある。日経平均株価に関しては、この視点で有用な指標の一つとして、「日経平均ボラティリティー・インデックス」(日経平均VI)があり、日本経済新聞社により算出・公表されている(図表1)。この指標は、「将来1か月間において予想される日経平均株価のボラティリティの水準」を年率・パーセント単位で表したもので (※1) 、その算出には日経平均オプションという金融商品の価格が用いられる。

この商品性により、日経平均オプションの価格には、市場での需給バランスを通じて、満期までの日経平均株価の分布に対する市場の予想が反映される。そして、日経平均VIは、1か月(30日)後に満期を迎える (※2) 全ての権利行使価格の日経平均オプションから、それぞれの価格に反映される予想分布を用いることにより、将来1か月間のボラティリティの予想水準を計算している。

図表2を見れば、同時点から2015年4月限の満期までの約1か月間におけるボラティリティの予想水準は、年率で20%を少し超える程度であり (※3) 、図表1と合わせれば、将来1か月間の予想水準が、昨年末あたりから下がってきていることが分かる。一方で、2015年4月限以降、目先2か月間(5月限)、3か月間(6月限)と、将来期間が長くなるほど予想水準が上がっており、市場におけるボラティリティの先高観が把握できる。このような計算により、図表1で示した日経平均VIの推移に奥行きの軸を加えることで、ボラティリティの予想水準の推移を立体的に捉えることが可能となる。

日経平均VIの推移(2013年1月~)

各将来期間までの日経平均株価のボラティリティの市場予想水準(年率)(2015年3月13日時点)

(※1)より正確には、日経平均株価のバリアンス(ボラティリティの2乗)の将来1か月間における予想水準をボラティリティの単位で表したものである。算出の詳細は、日本経済新聞社 (2014)「『日経平均ボラティリティー・インデックス』リアルタイム算出要領」を参照。
(※2)実際は、仮想的に「1か月後」とするために、原則として、期近限月と翌限月の二つが用いられる。
(※3)この方法によるボラティリティの予想水準には、投資家の将来のボラティリティの変動に対するリスク・プレミアムが含まれる。このため、この水準を先述のHVとそのまま比較することにはあまり意味がない、という点には注意する必要がある。

投資の損失とリスクとボラティリティ

投資の原則は、損をしないことです。必ずしも、儲けることではない。資産は、それ自身として、本源的収益性を有します。

つまり、資産の保有に収益は内包しているのです(この点については、1月14日のコラム「価値と価格とインカムとバリュー」を、ご参照ください)。ですから投資とは、その収益を帳消しにするような損失をださないように、資産を管理することなのです。
では、投資の損失とは何か。自明のようなことで、しかも基本的すぎるくらい基本的なことなのですが、なかなか難しい問題です。
原点に返って、考え直しましょう。2月 4日のコラム「クレジット投資の魅力」に書きましたように、「お金を貸したら、一定期間後に利息をつけて戻ってくること、これが投資の、というよりも金融そのもの、原点です。お金が戻ってくる、つまり、リターンreturnしてくるから、リターン(投資収益)というのです。」
原点においては、問題は全く自明で、要は、損失とは、リターンしてきた金額が、最初に出した金額よりも、少ないことを意味するのです。これは、始点の現金と終点の現金を比較(キャッシュ・オン・キャッシュcash ボラティリティとは on cash)する、原始的ですが、しかし、基本的な考え方です。現金の増えた分が利益で、減った分が損失です。
この考え方、全く正しいのですが、実務的には、少し問題があります。「始点の現金と終点の現金」の比較という点です。つまり、始点と終点が明確である場合は、簡単なのですが、世の中、そういう単純な場合は、必ずしも多くないのです。

話は、例によって飛びますが、金銭信託というものがあります。年金資産をはじめ、ほとんど全ての資産運用において、資金の受け皿には、この金銭信託が使われています。

実は、金銭信託は、基本要件として、有期であることと、金銭(まさに現金)による出し入れを前提にしています。ですから、本来は、信託した金銭の額と、信託終了後に戻ってくる金銭の額とを比較して、増減を測定すればよいのです。減っていれば、減った額が損失となる、そういう単純な仕組みを原型としています。信託期間を一会計期間とした単純な現金経理、これが金銭信託の基本です。
脱線ついでに大航海時代に飛べば、当時は、航海は一つの投資です。まずは、初期投資金額で船を仕立て、商品を仕入れて出航する。途中、様々な港で、商品を売り、換わり金で別の商品を仕入れ、そうして出航地へ戻り、商品を全て売却して、投資金額を回収する。その一航海を一会計期間として、初期投資額と回収額とを比較して、損益をはじく。信託と同様な現金経理です。
信託や航海のように、始めと終わりの明確なものについては、損失の何たるかは自明です。ところが、多くの場合、投資もまた、企業(ゴーイング・コンサーン、going concern継続企業)と同じで、半永久的な継続事業として行うのです。ですから、始めと終わりは、明確ではない。故に、人工的に期間を切って(最長一年ですね)、当該期間の損益を計測することになります。
こうなると、とたんに、損失とは何かが、わかりにくくなります。損失は、あくまでも、計測期間中の損失であって、必ずしも、現金で確定した損失ではないのです。この問題をめぐる議論は、ご承知のように、全くきりがなく長く続けられているのですが、いまだに、よくわからないのです。困ったものです。

また、話は飛びますが、sleep well at night(夜よく眠る)という表現があります。

これは、朝、現金から投資を開始し、夕刻に帰宅するときは、全て売却して現金に戻すことをいうのです。夜間は、現金になっているので、海外の市場で何が起きようが全く心配することなく、よく眠れる、という意味です。銀行や証券会社などの自己勘定取引部門や、商品の運用会社などでは、現実に行われていることです。
このsleep well at ボラティリティとは night、投資の本質または投資の損失とは何かを、考える際に有益です。このやり方だと、確かに、投資という行為は継続的に行われていても、それは、一日で清算される投資の連続として行われるので、どの期間で切ろうが、その期間の損失は、明らかに現金としての明確で疑義のない損失であるわけです。
同じ流儀で、一年の始め、日本年度でいえば、4月1日に、現金から運用を開始し、翌年初くらいから現金化を始めて、3月31には完全に現金に戻す、そのような投資を想像してください。一年というのは短すぎるかもしれません。いま、現金で始めて現金で終わるまでの期間を、ホライズン(horizon)とよびましょう。ホライズンは、計画のない投資はない、としたときの、その計画の想定する期間です。これは、一年ではないかもしれませんが、一方で、漠然として「長期」でもあり得ないわけです。おそらく、3年くらいでしょうか。
ところで、現金化することは、損益の明確な確定という意味で、筋が通るような気もしますが、問題もあります。現金化して、もう一度、買い戻すのは、無駄であろう(いわゆる「タイミングのリスク」も含めた取引コスト)ということと、全ての資産について同じホライズンを適用するのはおかしいであろう、ということです。
そこで、常識的には、投資対象ごとに、ホライズンを定めて投資したならば、それぞれ、ホライズンの終期に売却することを前提にするのだが、改めて、その売却価格においても充分に投資価値があるならば、どうせ買い戻すことになるので、保有を継続する、そのような管理になるのだと思います。
ここでのポイントは、「売却価格においても充分に投資価値があるならば、保有を継続する」ということです。逆にいえば、価値がないならば、売却する。もっと常識的には、保有価値がなくなった時点で、ホライズンの途中と雖も、売却すべきだ、ということでしょう。そこで、損失がでるならば、それは、明確な現金の損失として、確定すべきだということです。価値の下落は、間違いなく、損失なのです。
このとき、価値と価格の峻別は、決定的に重要です。このことについては、私は、繰り返し、繰り返し論じています。2009年12月17日のコラム「価値の変動と価格の変動」や、前掲の「価値と価格とインカムとバリュー」をご参照いただけると、助かります。

さて、いよいよ、今回のタイトル「投資の損失とリスクとボラティリティ」との関係で、いきなり結論的定義へ進みましょう。

即ち、リスク(risk)とは、価値の変動であり、ボラティリティ(volatility)とは、価格の変動であると。更には、狭義のリスクとして、価値の下落(変動は上昇も含むので)を定義しましょう。狭義のリスクが、より常識的なリスクであるのは、もちろんです。
こういうと、リスクは損失ではなくて、損失の可能性だろう、といわれるかもしれません。その通りでしょう。しかし、そもそもが、損失の可能性のあるものに、投資する人はいない。損失は、結果的にのみ、認識されます。リスクは、結果として生じた投資価値の毀損を、事実として、つまり、売却して確定した現金の損失として、受け入れることでしょう。
実は、現金化の最大の難点は、ボラティリティです。これは、価値変動と関係なく、勝手に変動している全くランダムな要素です。期間損益を測定すれば、ボラティリティによって、表面的に損失のでることは、かなり大きな可能性としてあります。しかし、この損失は、価値が変動していない限り、複数の計測期間を跨げば損益相殺して消える性格の、見かけ上の損失です。故に、ボラティリティによって、常時、価格変動している中で、定期的に現金化することは、タイミングのリスクも含めた総取引コストの観点から、好ましくないわけです。
一方で、価値の毀損は、必ず現金の損失として、確定することが重要だろうと思います。これは、とりわけ、投資の規律(ディシプリンdiscipline)、あるいは統制(ガバナンスgovernance)の視点から、重要なのです。価値の下落に起因する価格の下落と、ボラティリティによる価格の下落とを、明確に区別すること、いいかえれば、本当の損失を認識することこそが、投資の本質だからです。その本質を際立たせるには、損失を現金の損失として、明示するのが一番いいのです。
私は、「長期投資」という言葉が、好きではありません。このような「漠然とした大きな言葉」は、ディシプリンやガバナンスの不在と、実質的に同義になる場合があるからです。短期的なボラティリティに惑わされてはならないことは、当然です。しかし、いかに短期でも、リスクには、即時に対応すべきです。
ボラティリティは、長期に付き合う以外に、対処の仕様がない。その意味で長期投資なのですが、あくまでも、その意味でのみ、長期なのです。
以上

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